このコーナーではお母さまの子育てに役立つ情報を、主に「病気」「食事」「生活」の分野から
ご紹介していきたいと思います。
お母さまの広場
発熱と解熱剤を考える | |
2014-06-07 更新 | |
本格的な夏がやってくると、高熱/頭痛を主な症状とするいわゆる「夏カゼ」が流行します。 夏カゼ以外にも、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱など、発熱を伴う病気が流行します。 今回は、発熱と解熱剤について考えます。 お子さんの具合がいつもと違う時、「何かしてあげたい」と、親御さんなら強く思われることでしょう。 中でも発熱は、パパ、ママのご心配の筆頭です。 「お熱!」=「熱冷ましの薬/座薬」と、反射的に思われるのも、充分うなずけます。 パパ、ママが発熱を「こわい!」とお思いになる理由は、以下の3つであると思います。 @熱でこどもがつらそうだから。 A熱が高いほど、重い病気なのではと考えられるから。 B熱のために脳がやられてしまうと心配だから。 ところで、古代ギリシャの医者で「医学の父」とも呼ばれるヒポクラテスは、 「わたしに熱をくれれば、こどもを治すことができる」 という言葉を残しています。 今も昔も、こどもの病気に発熱はつきもの、大昔の医学においても、発熱は病気の回復に有益であるという事実が気づかれていたのでしょう。 多くの場合、体は体のために役立つ良い反応を起こします。 咳や鼻水、下痢、嘔吐、みんな、体にとって有害なものを外に排出しようとする反応でもあるわけです。 発熱も同じ。発熱は体が病原菌と戦うための一番効果的な武器の1つとも言えるのです。 発熱のはたらきには、大きく分けて次の3つがあげられます。 @細菌を増やさない 感染症の原因となる細菌は、高い温度の中では生き延びる確率が減少します。 A白血球を活発に 病原菌と戦う白血球は、高温の中で活発に活躍します。 B血液の鉄を減らす 鉄はとても大切な栄養ですが、細菌も生き延びるためにも鉄がとても必要です。 血中に鉄が多いと、細菌もパワーアプします。 そこで、発熱することで、からだは細菌の増殖に必要な鉄や亜鉛を肝臓や脾臓に溜め込み、すばやく細菌が利用できにくい状態に変化させます。 このように、発熱は、からだが感染症と闘うために、目的に叶った反応であるのです。 理論的には以上に述べた通りです。 それでは、どんな高熱も、そのまま放置がベストかというと、現実的にはそうではありません。 では、解熱剤は、どんなタイミングで使うのが一番良いのでしょう? 答えはズバリ「お子さんがつらそうなとき」です。 解熱剤は「熱を下げるくすり」ではなく、「お熱によるつらさを取るくすり」と捉えて下さい。 こどもは自分の体調に素直です。 つらくなければ、「よく食べ」「よく眠り」「よく遊ぶ」わけです。 これらのひとつでもつまずきがある時は、お子さんは「どこかつらい」と考えられます。 お熱が高い時は食欲も激減、水分もままなりません。 おとなのように、「食欲がないけれど、くすりだと思って食べておく」というわけにはいきません。 睡眠は体力回復の源、熱によるつらさで、しっかり眠ることができなければ、体力を消耗し、治る病気も治りません。 「こどもはあそびが仕事」、それすらもしないという場合は、熱によるだるさ、頭痛などで、かなりつらいのかもしれません。 そんなときは、タイミングよく解熱剤を使ってあげて、お薬でお熱が下がっているときに、お食事を摂らせたり、ぐっすり眠らせてあげたりと、解熱剤の効果を有効利用して体力維持を図ってあげましょう。 また解熱剤は同時に鎮痛剤でもあるので、頭痛、関節痛など熱による不快症状を取ってあげることができます。 解熱剤はいわば「お相撲における水入り」のようなもの。 「お熱を出して病原菌と闘うぞ〜〜」とスタートしたものの、「ちょっと食料や戦力が乏しくなってきた〜〜」というときに、一時的休戦期間を作って、戦力を蓄えるのが目的、と考えられます。 解熱剤で下げた熱は、また上がってくることが多いのですが、まだ一時休戦であって、戦いは終結していないのですから、それはある意味当然です。 最初に戻って、「発熱におけるパパ、ママの3つの心配」を考えてみましょう。 「@つらそう」については、上に述べた通り、「食う、寝る、遊ぶ」ががた落ちのときは、タイミングよく使うのも良いでしょう。 「A高熱=重い病気」については、「元気な39℃」より「ぐったり顔色も悪い37℃」のほうが、ずっと心配です。熱の高さと病気の重さは比例しません。 「B脳がやられる」については、脳炎脳症などで高熱がでているケースが考えられます。 しかしこれは、ちょっと違います。 熱で脳がやられるのではなく、脳炎で体温の中枢がおかしくなるため、めちゃめちゃな高熱が出てしまうのです。 このように、発熱は理論的にはからだの大切な反応であるけれども、お子さんが熱のためにつらそうで、特に食欲ががた落ちしたり、寝付きが悪かったりするとき、ぐずってばかりいるときなどは、安全な解熱剤を賢く利用して、お子さんの病気との戦いを有利に進めてあげるというのがベストの選択と思われます。 がんばって下さいね。 |
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