このコーナーではお母さまの子育てに役立つ情報を、主に「病気」「食事」「生活」の分野から
ご紹介していきたいと思います。
お母さまの広場
発達障害のお子さんを育む上での大切なこと | |
2012-12-08 更新 | |
先日、発達障害の頻度の統計結果が報道されていました。 小中学校年齢対象の調査で、およそ6%。 35人クラスで2人平均ということで、とても高い数字です。 今回はこのように発達障害を診断したり理解したりすることの意義や目的について考えてみたいと思います。 発達障害は、近年理解も広まり、アスペルガー症候群、ADHDなどの診断の名称は広く知られるようになりました。 しかし、これらの発達障害は、一般的にいわれる「病気」の概念とは少し違います。 肺炎を治すには、菌を殺す抗生剤を処方します。 ガンを治すには、たとえば切除したりします。 これに対して発達障害は、心の働き方が通常のお子さんとは少し異なっていることによる生まれつきの性格的な傾向のようなもので、完治を目的とした「治療」の対象とはなりません。 心の働き方を矯正したり治したりするのではなく、まわりがそのお子さんの心の働きや行動の特性を深く理解し、社会生活をおくる上での困難を取り除いてあげることが大切です。 診断することの目的は、お子さんの暮らしやすさを作ることなのです。 発達障害とは、いわば「能力のでこぼこ」状態。 得意な分野にはめちゃめちゃ能力を発揮しますが、苦手分野はめっぽう落ち込むことも少なくありません。 たとえば対人関係ではつまずきやトラブルが多いお子さんも、興味を持った得意分野ではすばらしい才能を発揮します。 事実、歴史上偉大な業績を遺した学者、芸術家、発明家のなかには、現在なら発達障害と診断される人がたくさんいます。 その子のもつ宝物をまっすぐ伸ばし、毎日を輝かせてあげるために、周りが配慮してあげなければならない1番大切なこと、それは健やかな自己肯定感を育むことであると思います。 自己肯定感とは、「自分はみんなに大切にされ愛されている」「自分も人の役に立てる大切な存在なんだ」と感じる心です。 ところが、発達障害のお子さんは、その独特な心の働きかたや行動パターンから、周囲の理解がないと「だめな子」「変わり者」「わがままな子」「やる気がない怠け者」と言い続けられ、叱られ続けてしまいます。 その結果、しだいに自身を喪失し、「ぼくはだめな子なんだ・・・」と萎縮し、ストレスを溜め込んで、別の問題行動を起こしてしまうことがあります。 いわば2次障害の発生です。 この周囲の無理解による2次障害だけは、絶対に防いであげたいものです。 「やればできるはず」と責めるのではなく、「苦手な分野だったんだね。無理言ってごめん。」と、受け容れ認めてあげることが必要なのです。 苦手な面も成長とともに少しずつ伸びてゆきます。 知的障害を伴わないこのような発達障害のお子さんは、経験を積み重ねていくなかで、自分なりの対処法を獲得してゆきます。 自分のとった言動でトラブルが生じた場合、「あの状況では別の言い方をすべきだった」など、分析学習します。 とくに思春期を迎えて、自我の中に自らの行動を見つめ評価するいわば「もう1人の自分」が登場する年頃になると、格段に周囲との折り合いも良くなり、本人もストレスが激減します。 そのような時期に到達するまでの間、決して自己肯定感が低くならないように、周囲が理解を持って接してあげることが、発達障害を診断することの1番の目的です。 発達障害のお子さんは、小さい頃から「育てにくい子」とおうちのかたがお感じになることが多いと思います。 発達障害はその子の生まれ持った個性のようなものであり、育て方によるものではまったくありません。 一所懸命お子さんと向き合ってこられた親御さんのご努力はすばらしいものであり、ぜひこれまでの子育てに自身を持っていただきたいと思います。 「この子はこのまんまのこの子でいいんだ。良いところもいっぱい持ってるし、この子なりにがんばってる。」 「私も私なりに、親としてしっかりこどもを理解してあげている。よくやってる!」 と、お子さんとご自分をめいっぱいほめてあげましょう。 子育ては「いいとこ探しの旅」、しかしすぐには結果は出ません。 あせらず、のんびり、道ばたの名もない小さな草花を見つめる時間も大切なのです。 ちょっとつまずいたときは、次の言葉を思い出してみて下さい。 「あなたのこどもは、あなたをえらんで生まれてきました。」(葉祥明) さあ、肩の力を抜いて、まずお子さんと微笑み返しましょう。 |
バックナンバー