このコーナーではお母さまの子育てに役立つ情報を、主に「病気」「食事」「生活」の分野から
ご紹介していきたいと思います。
お母さまの広場
電子メディアと子育て | |
2012-05-20 更新 | |
ここ50年で、私たち日本人のくらしは飛躍的に豊かで便利になりました。テレビ、ビデオ、パソコン、ケータイなど電子メディアの普及が、大きな役割を果たしてきたことは確かです。しかしその一方で、これらの普及がこどもたちの心や体の発育、発達に暗い影を落としているという事実が近年明らかになってきました。 人間は生物のひとつである「ヒト」として生まれますが、まわりの人間とのやりとりを通して社会性を持った人間になります。赤ちゃんが初めて結ぶ人間関係は親子の関係であり、赤ちゃんの心の発達でまず重要なことが「愛着の形成」です。愛着とは赤ちゃんが特定の人に対して「この人は自分の欲求や感情や意思を理解してくれる。この人といれば安心だ。」という認識をもち、その人を大好きになることです。 その基礎となるのが親子のアイコンタクト(目と目を見合わせること)です。ところが最近の統計で授乳中にメールを打っているお母さんが70%に上るという驚くべき事実があります。赤ちゃんも全身全霊をこめておっぱいを飲んでいます。授乳時はぜひ赤ちゃんの目を見て、やさしく声がけをしながら飲ませて上げましょう。 多くのお子さんでは8ヶ月ころまでにこの「愛着形成」が完了します。通常お母さんが1番の愛着の対象となりますが、ここを安心のよりどころとして赤ちゃんはしだいに行動半径を広げてゆくことができるようになります。 授乳中のケータイ操作の他にも、ベビーカーを押しながらケータイを見る、こどもと過ごす時間にパソコンに熱中するなど、お子さんと過ごすことができるかけがえのない時間が、これらの機器のために、ないがしろにされてしまっているケースが多いようです。まずは大人がこれらの機器を、節度を持って使いましょう。くれぐれも文明の利器に時間泥棒されないように。 こどもの心の成長で次に大切なことはコミュニケーション能力の獲得です。コミュニケーションとは、いわば気持ちと情報の双方向性のやりとり。そのためにまず必要なことが言葉による対話です。単に文を述べるというのではなく、相手の表情やまわりの雰囲気を敏感に感じ取りながら、言葉を選び、話し方を工夫し、時には身振り手振りも交えて、自分の思いを相手に伝えるとても高度なテクニックです。これは生の人間を相手に経験を積まなければ、決してうまくはなれません。この大切なコミュニケーション訓練の機会は、電子メディア接触視聴時間が長ければ長いほど削られてしまいます。とくに視聴開始年齢が低いほど、悪影響は甚大であるといわれ、そのようにして養育されたこどもたちは言葉や表情で自分を表現することが苦手で、友達との気持ちの交流が難しくなります。ひいては、自分の意志を表現する手段として、噛み付く、奇声を上げる、殴るなどの問題行動をとるケースも多くなります。たとえ教育ビデオといわれるものであっても、その情報伝達は一方向、小さなお子さんにとっては、百害あって一利無し、ビデオが子守役という状態は絶対に避けましょう。 このように電子メディアがお子さんの心の発達に大きな悪影響を及ぼすことは明らかですが、体の発育発達にも同様に困った事態がおきています。 こどもにとって遊びは仕事、とくに自然の中での外遊びが大切です。 ところが近年の電子メディア発達により、テレビゲームなどのウエイトが高まり、外遊び時間が激減してきています。鬼ごっこやかくれんぼなど、かつてのこどもの遊びは、こどもの心肺機能や筋肉の発達に大きく役立ち、また視力とくに立体視能力をしっかり鍛えてくれていました。さらに暑い夏や寒い冬でも元気に駆け回ることで、体温調整機能など自律神経系の発達もおおいに促されていました。ところが最近これらの能力は目に余る早さで衰退し、何となく体調がすぐれず活気のないこどもが増加しています。 かつてのこどもたちは、体をめいっぱい動かし、感情のぶつかりあう激しい遊びの中で、こどもなりの遊びのルールを身につけ、時には挫折を味わって、心も体も成長していました。自然の中で魚や虫を追いかけ、ときにはその死に出会い、「いのち」に対するまっとうで素朴な感情を身につけることができました。 それがゲーム世代ではどうでしょう? バーチャルの世界では、リセットボタンひとつで、またすぐに元通りになってしまいます。現実の世界とバーチャルの世界の境界がまだよくつけられない幼い頃から、電子メディアに接してきたこどもの「いのち」に対する感覚が、恐ろしい方向に育ってしまうことは想像に難くありません。5歳児が自宅のペットが死んだのを見て「パパ、電池を入れ替えて」と発言したという話は有名です。 このように現代の電子メディアは、お子さんの心身の発達に多大な悪影響があります。お子さまの大切な時間を泥棒し、健やかな心身の発育に取り返しのつかない害を及ぼす、これらのメディアのデメリットを、大人は十分理解して適切に対応してあげたいものです。 <今日からできるご提案> @授乳中にケータイをいじったり、テレビを見たりしない。 A食事中はテレビ/ビデオを消す。 Bビデオに子守りをさせない。(2歳未満はビデオを見せない) Cこどもにできる範囲でお手伝いをさせる。 D絵本の読み聞かせをする。 E外遊びをできるだけ取り入れる Fゲーム機は買わない。大人も子どもの前ではゲームは厳禁。 G中学校卒業まではケータイを持たせない。 H大人も子どものいる前では、仕事などの業務以外ではパソコンに向かわない。 Iノーテレビ/ノーゲームデーをときどき作る。 |
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